2024/07/01

声優から土木現場のICT担当に「声優も建設業も、ゼロからイチをつくる仕事」 Chance Making Story #16  宮武嵐さんのStory

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「好きな声優と共演したい」という一心で声優を目指した宮武嵐さん。今や志望者は30万人を超えるとも言われる熾烈な競争を勝ち抜き、夢だった声優としてデビュー。憧れ続けた師との共演も果たした。

しかし、人生は思いがけない方向へと舵を切る。様々なタイミングが重なり声優事務所を退所することになった宮武さんは、IT業界、不動産業界を経て、最終的に建設業界へとたどり着く。現在は東名高速道路のリニューアル工事現場で、専任のICT担当者として現場の生産性向上に心血を注いでいる。

当初こそ現場からは慣れないICTへの戸惑いもあったが、持ち前の容赦ないほどの行動力で信頼を勝ち取り、ICT施工のロールモデルとなる現場の構築に貢献。ゼロからイチをつくり上げる喜びを胸に、新たな道を切り拓いている。

「好きな声優と共演するため」に声優事務所へ

――声優を志したきっかけは?

きっかけは非常に不純と言いますか、好きな声優さんがいたので、一緒に仕事をしてみたかったというのが一番の理由です。高校に入るまではアニメにほとんど触れてこなかったんですけど、入学して最初に隣の席になった友だちにアニメを勧められて、だんだんとのめり込むようになりました。

それから声優という仕事を知って、2年生になる頃には声優という仕事に興味を持ちはじめましたね。その当時は声優って今ほど表に出る仕事ではなくて、どちらかというと裏方、縁の下の力持ちみたいな印象を持っていたので、そういった部分も自分の性格的に向いているかなって感じていたんです。それからすぐ行動に移して、3年生になったときにバイトで貯めたお金で声優の養成所に入りました。

――その後は?

高校を卒業したあとは尊敬している声優さんが非常勤講師をされていた専門学校の声優学科に入学して、卒業後はこの方が社長をされていた養成所に入りなおしました。この養成所で1年間学んで、同じくこの方が代表をされていたプロダクションに所属するためのオーディションに合格して、5年間ほど声優として活動していました。

それからは、ひたすら自分のボイスメモを録ってオーディションに送って、それが通ればスタジオオーディションに呼ばれて、それがまた2~3段階あって。並行してアニメやゲームの役にバーターとして呼んでいただいて、仕事をしながら学んでいくという日々でした。

――事務所を退所されたきっかけは?

先ほどからお話している尊敬していた声優さんや私の祖父母が亡くなったり、父が病気になったりということが、同じ年に重なったんです。

僕自身も家族に応援してもらいながら声優という夢を自由に追いかけてこれたので、そろそろ自立しなければいけないタイミングかなと思い、声優を辞めて一般企業に就職するという決断をしました。

またゼロからイチをつくるために建設業界へ

――大きな決断だったと思いますが、その後のキャリアは?

高校では工業高校の情報技術科で学んでいて、これを活かせる仕事に就きたいなという思いもあって、最初はIT業界に就職しました。データセンターで企業が使っているシステムに対する国内・海外からのウイルス攻撃への対策・対処を行う仕事でした。

その後は、人と関わる仕事にも就いてみたいと考えて、不動産の営業職に転職しました。

――最終的に、なぜ建設業界に?

声優をやっていた原点でもあるんですが、声優もものづくりというか、ゼロからイチをつくる仕事で、やっぱり一番好きだったなという気持ちがありました。また、社会勉強のために新聞やニュースなどに目を通す機会が増えていたのですが、その中で生活を守るインフラを造っている土木や建築の仕事ってかっこいいなと思っていたんです。

それから興味を持ってどんどん建設業界を見ていくうちに、「この仕事には自分が求めてることが結構入ってるぞ」と気付いたんです。

結果としてウィルオブ・コンストラクションを選んだのは、ホームページを見たときに未経験からでも頑張れる環境だと思えたからです。年齢的にも当時はもう27歳で、新卒とは求められることも違うので、僕の条件でも受け入れてもらえて、ゼロから自分の道の見つけながら進んでいけるのかな?と思って入社しました。

未経験から東名高速リニューアルのICT担当に

――今はどんな現場を担当しているんですか?

東名高速道路のリニューアル工事です。普段、僕らが見ている道路の表面はアスファルトが舗装されていますが、その下に床板というコンクリートの分厚い板があります。この橋梁は完成から50年以上経っていて、当然劣化もしています。これまでも部分補修はしてきたんですけど、もう部分補修だけでは対応しきれないということで、全ての床板を新しいものに取り替えて、桁の補強なども行いながら、今後100年もつ構造にしようという工事になります。この橋梁は片側3車線あって、1日の交通量も全国でもトップクラスなので、リニューアルに当たって車線も減らせないという中で行われています。

――この工事で宮武さんはどんな業務を担当しているんですか?

現場でのICTのヘルプデスクを担当しています。施工管理をする心づもりでいたのですが、僕の経歴を見た方に「ITに詳しい人を探している現場があるんだけど、どう?」と、今の現場に誘っていただいたんです。

現在の業務としては、システムに関する相談や質問があったら、僕が対応できるものは即時で対応することが主になります。ただ、どうしてもソースの権限上、僕では直せないものもたくさんあるので、それらは意見として本社にフィードバックを出して、回答が返ってきたときに僕が周知しています。


――使っているのはどういったシステムなんですか?

デジタル野帳や写真管理・出来形管理システム、あとはまだ製作段階のシステムなど多岐にわたりました。試行段階では他の現場でも使っているんですが、「使ってはいるけど、打合せ簿しか使ってないよね。もっと使いこなそうよ」といった、より一歩先の活用を目指しています。

僕が配属後に与えられた最初のミッションは、これらのシステムのマニュアルをドサっと渡されて、「これを完全にマスターしてもらったうえで、現場のみんなを指導して、全員が使えるようにしてくれ」というものでした。

それからは「そもそも、どうしてこれを使う必要があるのか?」というとこから調べて、マニュアルを見ながら使い方を覚えて。そのソフトを使って「こうしたらどうなるんだ?」っていうテストを1か月以上、ひたすら繰り返していました。

そして、「よし、使おう!」というタイミングで、僕がつくったマニュアルをもとに全体に勉強会を開いて、導入がはじまりました。

――現場の方のリアクションはどうでしたか?

現場の皆さんからしたら、誰かも分からない、土木の知識もない人間がいきなりシステムの勉強会をするというので、戸惑いもあったかもしれません。それに、やはり紙に慣れてらっしゃるので、アプリのロード時間やタッチペンの反映の遅さなど、ストレスになってしまっていることもあったかと思います。

ただ、システムでのちょっとしたバグだったり、使い方が分からないってことがあったときに、本社に聞こうにもレスに時間もかかるし、そもそも誰に聞けばいいか分からない方もいる中で、「分からないことがあったら、とりあえず宮武くんに聞いてみよう」みたいな流れができあがって、だんだん受け入れてもらえるようになりました。

また、本社のICT担当の方とも、本当に何十回、何百回と連絡を取り合う中で、「これっていつできますか?」とか「このデザインはこう変えたほうが現場の皆さんが使ってくれると思います」みたいな質問や要望を送りまくっていたので、現場側から本社に対してなかなか本音で言いづらい部分を僕が代わりに聞いてくれるということで、現場の皆さんとも良い関係性を構築していけたのかなと思います。

ICTを導入するために大事なのは「熱意と根気」

――一番のやりがいは?

僕自身が土木関係の知識がない中で、土木を専門としている方々でも初めて扱う新しいシステムやアプリにイチから関わらせてもらって、それを現場に広めてみんなが当たり前に使えるようになってくっていう過程を見ていると、頑張ってよかったなって思いますね。

あとは、今の現場は現場見学会が多くて、累計で1,500人超の方にお越しいただいているんですが、僕自身も司会をさせていただく中でICT専門の方々に直接褒めていただいたときは嬉しかったですね。

ゼロからがゆえに難しかったり、大変なこともあるんですが、新しいものを学ぶことは楽しいので、どんどん挑戦させてもらえる環境で何でも試せるのはすごい楽しいですし、達成感を感じます。

――現場にICTを浸透させるには、どのようなことが大切だと感じましたか?

ITリテラシーという言葉もありますが、ICTに抵抗感なく、積極的に勉強できるような方が現場に1人や2人は必ずいて、その方がリーダーとして主導していかないと絶対に広まらないなとは感じました。

現場単位で考えると、大手ゼネコンには扱える方がいたとしても、今度は協力会社の職人さんたちに広めていくという次のステップもありますから。そこまで到達してこそ、「ICTを使っている」と言えると思うので。そのためには、分からないことがあれば何でも聞けるような人が現場にいて、すぐにやり取りができる環境じゃないと、めんどくさくなってすぐに使わなくなってしまうと思います。

――宮武さんが意識していることはありますか?

新しいシステムを入れるとき、戸惑いは必ずあるものなので、「1回やってみましょうよ! 僕が詰所に行って全部教えるんで!」と前向きなコミュニケーションを取るようにしています。そうでなければ、使う側も前向きにならないと思うんです。

ITって“熱意”とかけ離れているイメージがあると思うんですけど、建設現場ではITこそ熱意が大切だなと感じています。とにかく根気が必要ですから。とくに建設業界では「ITなんて使わないんだ!」っていう根気も強いと思うので。

あとはスピード感も大事にしています。すぐに返信が来ないと「もういいや」に繋がってしまいます。とにかくスピーディーに、「こういう不具合が起きたんだけど、どうすればいい?」と聞かれたら、どんな状況でもすぐに返事をして、すぐに行って、その場で対応できなかったらすぐに調べるということは大切にしていますね。

――今後の目標やキャリアはどのように考えていますか?

これからも土木現場でICTに携わっていけたら嬉しいですね。とくに、建築と比べて土木のほうがICT化の進みがゆっくりだと感じているので、これからも土木の領域で力になっていきたいなと思っています。

具体的には、「この人が現場にいたらなんか安心だな」と思ってもらえるような、皆さんが工事に集中できるように、「何か問題が起きたら、宮武に言えば大丈夫」と言ってもらえる環境をつくりたいと考えています。

――最後に、後輩たちに向けてメッセージをお願いします。

「失敗を恐れながらもやる」ということが、僕が大切にしてきたことです。

現場へ行くと、皆さん忙しい中で質問しに行ってていいタイミングが分からなかったり、物事が正しいかどうか分からなかったり、不安なことがたくさん出てくると思うんですけど、そういった不安を感じずにやるのではなくて、不安として自分の中でしっかりと咀嚼して、「この不安はどうやったら解決できるのか」というところまで考えて仕事に取り組むと、自分が考え抜いて出した結果に対して相手も同じ熱量で返してくれると思います。

僕自身も「僕がいる価値ってこの現場にあるのかな?」って、ずっと不安に思いながらやっていたんです。この現場に貢献できているのか、役に立っているのかって。でも、配属からずいぶん経ったころ、現場の懇親会で「宮武くんがいなきゃだめだよ」と言ってもらえたときに、ようやく自分がいてよかったんだと思えるようになりました。こんな僕でも頑張れている姿が、誰かの助けになったら嬉しいです。

宮武嵐さんプロフィール

声優として5年間活動したのち、IT業界や不動産業界を経て、ウィルオブ・コンストラクションに入社。東名高速道路リニューアル工事のICT担当として、現場の生産性向上に貢献している。

宮武嵐さんのStoryはこれからも続きます。
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株式会社ウィルオブ・コンストラクションでは、
これまで多くの建設技術者の方々の転職活動をサポートしてきました。
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